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ガレ「風景画」象嵌4段ネストテーブル<br />
1900年代 フランス ウォルナット/多種木材による象嵌細工

ガレ「風景画」象嵌4段ネストテーブル
1900年代 フランス ウォルナット/多種木材による象嵌細工

風景画・・・ヨーロッパでは、中世の時代まで絵画は「理想化された世界」を描いたものでした。取り上げられるテーマは、聖書、神話、名士の肖像画に限られ、偶像化された聖人や描かれる王族の権力を誇示する手段であり、背後の「風景」はそこに描かれる英雄の為の理想的な書割でした。産業革命を経た19世紀ヨーロッパ。機械化され巨大化する産業の波に押し流され、都市に一極集中する人々は、次第に人間の在り方について問い始めます。芸術も、新たな局面に遭遇します。絵画のバルビゾン派、印象派、近代的な装飾様式アール・ヌーヴォー・・・芸術家たちが表現した「風景」には、もはや歴史的・宗教的な課題や偶像化された人物は描かれていませんでした。自然の中に生きるものたちは、花も植物も生き物も飾らない姿で、みずみずしく表現されました。「風景」に、存在意義が生まれたのです。

本作品は、アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家エミール・ガレによる「風景」を題材にした4段ネストテーブルです。ガレによる家具作品は植物を題材にしたものが多く、「風景」を題材にした作品は希少価値が高いです。クロード・モネ、ポール・ゴーギャンなどの著名な芸術家の近代的な描写を、ガレ独自の芸術観で風景画を木象嵌細工で斬新に表現しています。4つから成るテーブルは、それぞれにストーリーがあり、全て広げて繋げることで物語は芸術品として完成されます。

「大気の色合いや山の線や雲の形の中には、とても読みつくし得ないモティーフのインスピレーションがあり、仕事があり、そして大部分の人間がまだ味わったことのない楽しみがあります。遠くの野原や水辺はまさしく『人知れぬ宝物殿』であります。これらの理想的な豊かさを大衆の前にもたらし得るか否かは、ひとえに芸術家次第なのです。」―エミール・ガレ

自然に、神が宿る瞬間・・・永遠の中の一瞬を、詩作するように4つの海の風景に作り上げました。カモメが飛び交い、光が舞う海辺。永遠に消えることのない輝き、或る日の海辺の物語が本作品に込められています。

  • 1.ガレを象徴する植物「アザミ」

    1.ガレを象徴する植物「アザミ」

    ガレの出身地であり活動の拠点であるロレーヌ地方を象徴する植物「アザミ」。故郷への愛国心を込めて、ガレをはじめとしたナンシー派芸術家のシンボル的の植物モチーフです。本品の最も大きなテーブル(1段目)に、ナンシー派の芸術家ガレを示すように自然界を力強く生きる「アザミ」が美しく象嵌されています。「自然と結びついたデザインが正しいデザインである」とするガレの信念がうかがえる見事な仕上がりです。

  • 2.本作品の題材「ブルターニュ」

    2.本作品の題材「ブルターニュ」

    本作品に描かれている海辺はフランス・ブルターニュ地方。北はイギリス海峡、西はケルト海と大西洋、南はビスケー湾と接する海に囲まれた地方で、アーサー王伝説の舞台と言われるパンポンの森が広がります。歴史的な建造物が残る自然に恵まれたブルターニュをフランスの芸術家が好み、ガレのようにここを舞台にした芸術作品が制作されています。■画像:バラ色花崗岩コート・ド・グラニット・ローズの風景

  • 3.ブルターニュと芸術家

    3.ブルターニュと芸術家

    海と森に恵まれた風光明媚なブルターニュは、多くの芸術家に愛されました。ポール・ゴーギャン(画像)やエミール・ベルナール、マルク・シャガールは、ブルターニュの様々な風景や人物を、斬新な筆致で描いています。彼らが描いた輪郭線、好んで使用した原色に当時美術界で大流行していた日本趣味が伺えます。ジャポニズムの影響を受けたガレもブルターニュに魅せられた芸術家の一人だったことを本品が示します。

  • 4.ブルターニュ伝統衣装の象嵌

    4.ブルターニュ伝統衣装の象嵌

    本作品の最も小さなテーブル(4段目)に象嵌されている人々はブルターニュ伝統の民族衣装を着用しています。女性の頭を飾るレースで飾られた麻や木綿の頭巾はコワフと呼ばれます。農作業の日除け雨除けから派生した衣装で、村毎にデザインが異なります。女性が髪を隠すことが美徳とされた、キリスト教の教義に基づいた衣装です。細部に至るまでブルターニュを表現したいという芸術家ガレのこだわりが垣間見えます。

  • 5.本品を優雅に舞うカモメ

    5.本品を優雅に舞うカモメ

    本作品の4段目のテーブルに海を優雅に舞うカモメが緻密に象嵌されています。カモメはギリシアの美神アフロディテと海の女神レウコテアの霊鳥といわれ,海で溺れかけたオデュッセウスを救いにカモメの姿をしたレウコテアが現れたと伝承されています。カモメはブルターニュの名物で、コロニーと呼ばれる巨大な岩場の巣に暮らしています。ブルターニューを表現したいガレの本品への想いが、幸福を運ぶカモメに込められています。

  • 6.ガレ象嵌4段ネストテーブル

    6.ガレ象嵌4段ネストテーブル

    ネストテーブルとは、サイズが異なる小型テーブルを入れ子状にして重ね置きできるように組み合わされたものを総称します。4つのテーブルの組みをデザインしたのは、18世紀イギリスを代表する家具デザイナーのトーマス・シェラトンと言われています。編み物をしたり、チェスに興じたり、お茶を愉しんだり、18世紀以降ヨーロッパ貴族の暮らしを豊かにしました。実用面で重宝されたネストテーブルを、ガレはアートとして新たな境地を開拓します。4段全て広げたときにガレの芸術観は完成され、無上の感動が沸き起こります。