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イルミネーションが夜の街をあざやかに彩るクリスマスに相応しい逸品をご紹介します。
光が織りなす究極の美の世界を追求した、バカラによる荘厳なクリスタル9灯シャンデリア。
かつて光を所有することはまさに権威の象徴でありました。クリスタルガラスの発明によって、権力者たちは永遠の光をそこに見出したのでしょう。闇を照らすクリスタルのシャンデリアは、世界各地の宮殿を煌々と照らし続けました。
「私の中には太陽が宿っている。他に類を見ない眩い光が触れるもの全てに善を齎す。太陽は偉大な君主だけが描きうる最上の美と力を与えてくれるのである」‐ルイ14世の著書『王子教育のための回顧録』より‐
後に太陽王と呼ばれたブルボン王朝ルイ14世は、その「最上の美」の世界をヴェルサイユ宮殿に築き上げました。そこで夜ごと繰り広げられた舞踏会は、クリスタルの燭台やシャンデリアの明かりで、非日常の世界を創り出し、夜の闇を制覇することで、民衆に王の絶大な権力を誇示しました。今日続くイルミネーションは、この頃にルイ14世がヴェルサイユ宮殿をイルミナシオン(illumination)でライトアップさせたことに端を発しているとも言われています。
当時、ガラス製品をボヘミアなど外国からの輸入に頼っていたフランスは、戦争で疲弊した財政の再建と国家の威信にかけ、国内でのガラス工場を創設します。そうして誕生したのがクリスタルの王者「バカラ」です。そのバカラのシャンデリアは、現代では他のメーカーの追随を許さない「クリスタルの王者」たる存在感を秘め、フランス国王はもとより、インドのマハラジャ、トルコのドルマバフチェ宮殿、ロシアの皇帝ニコライといった世界の王者たちからオーダーを受けてきました。
今回ご紹介するシャンデリアも当時の上流階級の人々のステイタスの証であり、おそらく王宮などで圧倒的な存在感を放つバカラのシャンデリアに憧れた、新興財閥、ブルジョワが自邸に置くためにバカラに特注したものでしょうか。そのスタイルはナポレオン帝政時代の装飾様式、アンピール様式で構成されています。勝利や栄冠を象徴する月桂樹やパルメット、スフィンクスなどのモチーフは、エジプトやイタリア遠征の影響を反映し、古典主義に感銘を受けたナポレオンは、ヴェルサイユ宮殿の自室もアンピール様式で設えさせました。
皇帝の威厳を湛えるアンピール様式は、現代でも高級感のある雰囲気を演出する本格的なヨーロッパのクラシカルスタイルとして、格式ある高級ホテルやレストランで用いられ、現代のモダンなお部屋に重厚感のある空間を創り出します。
100年前に制作されたこのシャンデリアも煌びやかさの中に、荘厳な美しさが感じられます。特に深みのあるクリスタルの透明感と上品な輝きは、現代のものでは到底醸し出せないアンティークバカラの最大の魅力と言えましょう。様々な光源をとらえるように工夫されたクリスタルのシャンデリアは、日中の光の中では虹色の輝きを放ち、照明を入れたときは、幻想的な光の集合体に一変します。天井に映り込んだときに現れる雪の結晶のような繊細な模様は、バカラのカット技術の高さを物語っています。
3世紀にも渡って人々を魅了し続けてきたバカラだけが放つ、時を超越した光の芸術をここに見ることができます。これほど贅沢にバカラのクリスタルガラスを用いた貴重なシャンデリア。ほんものを愛し、こだわりを持つ人によって、大切に継承されてきたものでしょう。300年前の宮殿で繰り広げられていた舞踏会や晩餐会に思いを馳せながら、永遠の光をここに見ていたのかもしれません・・
【参考文献】
石井リーサ明理「都市と光―照らされたパリ」水曜社 2004
Jean-Louis Curtis.Baccarat.Thames and Hudson Ltd. London, 1992