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夢織のおすすめ

アンピール様式<br />
ブロンズアラバスター6灯シャンデリア<br />
1900年頃 フランス

アンピール様式
ブロンズアラバスター6灯シャンデリア
1900年頃 フランス

1804年12月2日。革命後の荒廃したフランスに、再び栄華が花開く時代が到来しました。皇帝ナポレオン1世戴冠式。ヨーロッパの戦場に数々の伝説を創りあげ、英雄の名をほしいままにしたナポレオンは、皇帝の位を手にし、ヨーロッパのほぼ全土を制圧します。そのカリスマ性は政治のみならず芸術にも影響をもたらし、アンピール(皇帝)様式と称される勇壮なスタイルを生み出します。アンピール様式は、スゥエーデン、ドイツ、ロシア…やがてヨーロッパ各国の宮廷で大流行し、今日まで幾度となくリバイバルされて来ました。

今回の夢織のおすすめは、1900年頃アンピール様式ブロンズアラバスタ―6灯シャンデリアです。アンピール様式が、復興され流行した20世紀初頭の作品です。古代ギリシャやローマに触発された、金と黒を基調とした豪奢で古典的なアンピール様式。ブロンズが織りなす重厚なフォルム。ガラスではなく、大理石アラバスタ―がシェードに使用された豪華な演出。このシャンデリアには、従来のアンピール様式の特徴に加えて、1900年頃のフランスの繁栄を象徴する、新しいアートの要素も感じさせます。

それでは細部を見ていきましょう。

  • 個性的なデザインのアンピール様式シャンデリア
    天井に装着されたブロンズのトゥピ・サボtoupie sabots(フランスの独楽)型のブラケットから、ペンダント状に吊るされた本体。トゥピ・サボは、18世紀以来フランスの高級家具にしばしば使われる装飾モチーフです。

  • 一般的な“アンピール型のシャンデリア”とは、クリスタルガラスのパーツを連ねた、円錐型に半球形を組み合わせた洋梨型のものを指しますが、本作は、全体のフォルムこそ洋梨型ですが、全く独創的な造形で表現されています。

  • 皇帝を守護する鷲のブロンズ像
    回転する惑星、地球を象徴するかのような独楽型のブロンズに、鋭い爪を掛ける3羽の鷲。さながら、地球の朝・昼・夜を支配しているかのようです。堂々と身を反らせ、嘴に釣鐘型のシェードを銜えています。ローマ戦士の、飾兜を連想させる勇壮な姿。鷲は古代から鳥の王者と讃えられ、古代ローマ帝国や、ヨーロッパ屈指の名門ハプスブルグ家、イギリス王室の紋章に使われるなど、権力の象徴とされて来ました。1804年皇帝の位を冠したナポレオンは、鷲をフランス陸軍の象徴に選びました。

  • 光を通す鉱物、アラバスタ―のシェード
    シェードには、光を通す神秘の石、アラバスタ―が使われています。淡い乳白色の、滑らかに磨き上げられた表面。内から明かりを灯すと、幻想的な光が周囲を包みます。

  • シェードにはそれぞれ内側に白い塗料がひと刷毛塗られ、その部分だけが遮光になっていて、印象的な表情を与えています。ふと、エジプトの王たちが眠る、テーベ砂漠の夕日にかかる雲の輝きが連想されます。

  • 3羽の鷲の間には、魅惑的なS字を描く漆黒の松明に見立てた3つのシェード。S字の先端の、渦巻くスクロールのブロンズ装飾は、アンピール様式で好んで使われる要素です。ルイ14世やマリア・テレジアに代表される絶対君主にとって、強力な軍隊を所持することは、権力の行使でもありました。時代の寵児たる英雄、軍人達を華々しく装いたてた軍服。位の高い軍人ほど美しい軍服で着飾りました。アンピール様式は、華麗な軍服の装飾要素を室内装飾に投影させたもの。スクロールのモチーフは、英雄たちの胸を飾った華麗な金糸のモールから発想されたと言われています。

  • かつて、皇帝たちがもたらした栄光の日々。英雄たちは夜を圧する光を所有しながら、その一瞬の煌めきに、全能の夢を描いたのでしょうか。

  • アラバスター
    光を通す白い鉱物、アラバスタ―。古代エジプトの女神からその名が付けられたと言います。古代エジプトでは、王女の香水瓶や化粧道具、ヘレニズム時代には神々の像の彫刻に用いられました。ガラスが窓に使われる以前の中世では、薄く板状に切り出したものが窓に装着されていました。ルネサンス以前までイタリアの教会に使われ、幻想的な光を室内に演出していました。

  • シンボルとしての鷲
    正々堂々たる「一騎打ち」の戦いを愛し、ローマ軍の守護神として祀られたギリシャ神話の神ジュピター。ジュピターの幸運の象徴、鷲。ナポレオン1世は、かつてローマ軍に栄光をもたらした鷲を、軍旗の先端にブロンズの小像にして掲げ、フランス軍を鼓舞しました。鷲は、ナポレオンの幸運の象徴でもあったのです。

  • アンピール様式と二人の皇帝―ナポレオン1世
    戦争の天才、ナポレオン・ボナパルド。コルシカ島の貴族の血統に生まれたナポレオンは、フランス革命の混乱に乗じて軍人として頭角を現し、やがて皇帝の位を手に入れます。オーストリア皇帝、ロシア皇帝を打ち負かしたアウステルリッツの戦いは、ナポレオンの絶頂期の象徴でした。ヨーロッパのほとんどを制圧したナポレオンは、その波乱に満ちた51年の生涯のほとんどを戦場で過ごしました。

  • アンピール様式と二人の皇帝―ナポレオン3世
    アンピール様式が再び流行したのは、甥のナポレオン3世の皇帝即位がきっかけでした。時は19世紀後半。共和制がナポレオン3世の帝政にくつがえされ、パリに再び栄華の時代が戻りました。皇帝の偉業は、パリ大改造とパリ万博です。下水道やガス灯が導入され、近代都市に生まれ変わったパリ。5度の万博は、各国の王族を熱狂させ、パリを世界一の芸術都市に高めました。

  • アンピール様式と家具の歴史
    フランス革命時、歴史ある宮殿の数々は荒廃しました。調度品は略奪され、売却され、家具作家の技術は退化し、フランスの装飾芸術は危機的な状況に陥りました。ナポレオン1世は皇帝即位後、速やかに宮殿再築に乗り出します。ギリシャ・ローマ時代の古典的な美意識に基づいた装飾様式は、アンピール(皇帝)様式と名付けられました。

  • アンピール様式と家具の歴史
    フランス革命時、歴史ある宮殿の数々は荒廃しました。調度品は略奪され、売却され、家具作家の技術は退化し、フランスの装飾芸術は危機的な状況に陥りました。ナポレオン1世は皇帝即位後、速やかに宮殿再築に乗り出します。ギリシャ・ローマ時代の古典的な美意識に基づいた装飾様式は、アンピール(皇帝)様式と名付けられました。

  • シャンデリアの歴史
    シャンデリアの前身は、6世紀ビザンチン帝国で発生しました。元来は教会や宮殿でしか使われない高価なものでしたが、15世紀を境に裕福な商人の屋敷にも飾られるようになります。当時の素材は真鍮。優雅な曲線を描く腕木の蝋燭の光が、人々の気持ちを豊かにしました。その後ヴェネツィアのムラーノ島でガラス技術が向上し、ガラスのシャンデリアが各国の宮廷を彩りました。

  • シャンデリアの歴史
    19世紀、人類はより煌びやかで安全な、電気による光を手に入れます。1879年エディソンによって白熱灯が完成。列強諸国は電気の開発に乗り出します。この白熱灯の発明は、公共・民間を問わず電気照明が普及する契機となります。本作品がつくられた1900年の第5回パリ万博では電飾照明が大規模になり、「電気館」は人気を博します。電飾技術は急速に発展していましたが、一部の富裕層のみが生活に電気を取り入れていたため、本作が飾られていたお屋敷の規模が偲ばれます。