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ナポレオンⅢ世<br />
「貴婦人」44枚陶板画ボヌールドゥジュール<br />
1850年代 フランス エボニー<br />

ナポレオンⅢ世
「貴婦人」44枚陶板画ボヌールドゥジュール
1850年代 フランス エボニー

ボヌール・ドゥ・ジュール・「一日の楽しみ」と名付けられた特別で優雅な家具。18世紀中頃から、フランス宮廷を中心にヨーロッパ各国の王侯貴族の貴婦人たちを魅了した贅沢なデスク。

フランスはナポレオンⅢ世時代に制作された、「貴婦人」陶板画をはじめ44枚の陶板画が華麗に埋め込まれたボヌール・ドゥ・ジュール。装飾芸術の極みと言える特別なオルモル細工にセーブル様式の美しい陶板。フランス宮廷文化のエッセンスをふんだんに感じることが出来る、優雅で秀逸な逸品です。

中央の鏡張りの棚は、どこか神聖なたたずまいは、教会のトレサリーのフォルムです。登頂のお花の陶板は、ステンドグラスの配置。側面の溝象嵌には、生命力の印アカンサスと、美の女神ヴィーナスの象徴シェルの繊細なオルモル細工が施されています。印象的な、鏡が施された棚。かつて、そこには邸自慢の装飾品が置かれ、背部の鏡にはきらびやかなシャンデリアや、優美な草花の彫刻や金彩が施されたパネル状の壁、マントルピースに飾られた花々が映し出されたことでしょう。西洋の室内装飾は、鏡に映りこむ室内の風景も、華麗な静物画の役割を果たします。

左右の扉には、それぞれ貴婦人の肖像画が描かれています。向かって右の貴婦人。シルバーがかった美しい髪を、ふわりと膨らませているのは、当時貴婦人の間で流行した髪型です。胸元を摘んだばかりの大輪の薔薇で飾り、艶然と微笑んでいます。抜けるように白い肌、優雅な鼻筋に、フランスの悲劇の女王の面影が重なります。

左の貴婦人の素敵なドレス。甘く淡いラベンダー色は、貴族の貴婦人が特に好む色です。胸元を飾る繊細なレース。夢見るような瞳を見開いて微笑んでいます。戯曲家・女優として名を馳せた、モンテッソン侯爵夫人の面影が重なります。この陶板は絵付けの技術が極めて高く、ふたりの貴婦人の高貴なたたずまいまで感じ取ることができます。セーヴル窯では、絵付師に画家を採用し、人物を描くことのできる絵付師は、最高位でありました。ピエール=オーギュスト・ルノワールは、画家として大成する以前、陶器の絵付職人をしていたと言います。この貴婦人像を描いた人物も、後に巨匠となったのかもしれません。つややかな漆黒の木材や幻想的な杢が浮かび上がる木材を背景に飾られる貴婦人と、咲き誇る花々の陶板。まるで美術館を訪れ、名画に魅了されている気分になります。

そしてこの家具を特別な存在にさせる、左右のオルモル像。髪型・服装から、貴族階級に属する男性です。向かって右の男性はたいまつを手にしており瞑想するような表情を浮かべています。詩を朗読しているのでしょうか。左の男性は、文書を手にしています。うつむいて、どこか思惑に耽っているような表情。名門貴族で文学者であり、17世紀のサロン文化のスターであった、フランソワ・ド・ロシュフコーの姿を連想させます。このように神話の神々や天使でなく、人物の像が装着される家具は珍しく、この優雅なボヌール・ドゥ・ジュールに、さらに貴族趣味を加味します。

中央の引き出しには、花々が描かれた、オーバル型や小さな円形の陶板がちりばめられ、見る者の目を楽しませます。見ると、陶板に掛かれている薔薇やスミレは、それぞれに画が異なります。丁寧な絵付けが家具の品格を高めます。ゆっくりと引くと、そこにスライド式の天板が現れます。花壺と草花の金彩で彩られた革が張られており、この上で手紙が書けるように工夫されています。ボヌール・ドゥ・ジュールは、貴婦人が手紙を書く文机の役割を果たし、時にお化粧道具を忍ばせ、くつろぎの時間を愉しむための家具でした。

家具を支える脚にも細かな装飾が施されています。溝象嵌に加えられた金彩。ブローチのように中心部に飾られた陶板。細部全てに、フランスの極上の美意識が宿ります。

今日はエリゼ宮のお茶会。ブドウのエッセンスが入ったリップバームで唇を整え、お出掛けの準備です。貴婦人の陶板の扉を鍵で開けると、中に小さな宝石箱が。近頃パリで大流行しているスティック型のルージュを取り出し、唇を彩ります。すると、魔法にかけられたように、気分がふわりと上昇します。

その日、この家具のかつての所有者には、どんな出会いが待っていたのでしょうか。

  • 1.ボヌール・ドゥ・ジュール

    1.ボヌール・ドゥ・ジュール

    貴婦人のためのデスク「ボヌール・ドゥ・ジュール」。ヨーロッパの宮廷では、セーヴルやウエッジウッドといった名窯の陶板が装飾された家具が好まれました。全て手書きによる44枚の陶板画が装飾された、極めて貴族趣味の逸品です。

  • 2.鏡張りの飾り棚と陶板装飾

    2.鏡張りの飾り棚と陶板装飾

    どこか神聖なたたずまいは、教会のトレサリーのフォルムです。登頂の花の陶板は、ステンドグラスの配置。側面の溝象嵌には、生命力の印アカンサスと、美の女神ヴィーナスの象徴シェルの繊細なオルモル細工が施されています。

  • 3.「貴婦人」陶板画

    3.「貴婦人」陶板画

    左右の扉には、貴婦人の肖像画が描かれています。向かって右の貴婦人の、シルバーがかった美しい髪をふわりと膨らませているのは、当時貴婦人の間で流行した髪型です。左の美しい貴婦人の素敵なドレス。甘く淡いラベンダー色は、貴族の婦人が特に好む色です。

  • 4.貴婦人の文机

    4.貴婦人の文机

    中央の引出しをゆっくりと引くと、スライド式の天板が現れます。花壺と草花の金彩で彩られた革が張られており、この上で手紙が書けるように工夫されています。ボヌール・ドゥ・ジュールは、貴婦人が手紙を書く文机の役割を果たし、時にお化粧道具を忍ばせ、くつろぎの時間を愉しむための家具でした。

  • 5.細部まで美しい装飾

    5.細部まで美しい装飾

    城や貴族の館のバルコニーを彷彿させる頭頂部のオルモル細工。連続する文様は、フランス・ブルボン王朝の象徴たるユリを連想させる高貴さ。洗練されたデザインに、思わず見惚れてしまいます。

  • 6.高級木材アンボイナ

    6.高級木材アンボイナ

    宮廷家具の代名詞とも言えるアンボイナ材による化粧張り。成長段階での突然変異によって生まれる貴重なアンボイナの杢による美しい木目が本品の気品高さを演出します。

  • 7.名門貴族ロシュフコー

    7.名門貴族ロシュフコー

    名門貴族で文学者であり、17世紀のサロン文化のスターであった、フランソワ・ド・ロシュフコー(1613-1680)。神話の神々や天使でなく、人物の像が装着される家具は珍しく、本品は貴族のための装飾家具であることを示しているのでしょう。ロシュフコーの彫像(左)は、ルーブル美術館に展示。

  • 8.アンドレ・シャルル・ブール

    8.アンドレ・シャルル・ブール

    ルイ14世のお抱え家具作家、天才アンドレ・シャルル・ブール(1642-1732)は、オルモル細工を家具に装着させました。家具の保護が目的でしたが、金属細工を芸術作品までに高めました。本品に施されているオルモル細工と装飾はブールの技術を継承したものです。

  • 9.トレサリー

    9.トレサリー

    ゴシック建築の窓飾りであるトレサリー。アーチ形のフォルムは、ヨーロッパの建築ばかりでなく、古城や貴族の館の高級家具のデザインに見られます。本品の中央の鏡張り棚にも見られ、ステンドグラスを見立てた陶板画と共に神々しく装飾されています。

  • 10.ロスチャイルド家とハイクレア城

    10.ロスチャイルド家とハイクレア城

    貴婦人のためのデスク。本品のテーマである貴族を題材としたドラマ「ダウントンアビー」の撮影舞台となったハイクレア城は、代々カーナヴォン伯爵家の古城です。第五代カーナヴォン卿に嫁いだロスチャイルド家のレディ・アルミナは、夫の考古学研究を経済的に支え、慈善事業家として歴史に名を残しました。ロスチャイルド家の城に、本品のような陶板画が施された装飾家具が華麗に設えられています。写真は第五代カーナヴォン卿とレディ・アルミナの結婚式。

  • 11.ロスチャイルド家と社交界

    11.ロスチャイルド家と社交界

    世界を動かす大富豪ロスチャイルド家は、ヨーロッパ社交界の中心であり続けました。モナコが、世界的に有名な高級リゾート地になったのも、ロスチャイルド家の別荘があった影響です。本品のような贅を尽くした装飾家具は、ロスチャイルド家のような貴族文化の結晶と言えるでしょう。

  • 12.華麗なるロココ

    12.華麗なるロココ

    薔薇を手にしたマリー・アントワネットの肖像と、薔薇を胸に飾ったポンパドゥール伯爵夫人。陶板画が施された装飾家具は、ロココの時代に生まれた装飾芸術です。本品のように44枚の陶板画が装飾された作品は大変稀少です。

  • 13.貴婦人のための鍵

    13.貴婦人のための鍵

    貴婦人の陶板の扉を開けるための鍵。持主にしか分からない、引き出しの中にそっとしまっていたのでしょう。貴婦人の陶板の扉を開けると、宝石箱が・・・この家具で繰り広げられた夢のような宮廷生活が想起されます。

  • 14.王侯貴族趣味の装飾家具

    14.王侯貴族趣味の装飾家具

    陶板に描かれている貴婦人をはじめ、薔薇やスミレは、それぞれに画が異なり、丁寧な絵付けが家具の品格を高めます。ボヌール・ドゥ・ジュール・・・華やかな室内装飾の中、貴婦人が一日の幸せをこの美しい家具から感じていたのでしょう。