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ノルマンディー様式ダイニングセット<br />
1870~1880年頃 フランス<br />

ノルマンディー様式ダイニングセット
1870~1880年頃 フランス

イギリス海峡を臨むフランス北西部地方、ノルマンディー。この海辺の風光明美な地方は、かつて「ノルマンディー公国」という国でした。勇猛果敢で、英知に優れた海の民ヴァイキングの首領ロロが、フランス国王シャルル3世に命ぜられて統治した国、ノルマンディー公国。波乱の歴史を刻んだこの公国は、素晴らしい建築・装飾美術をヨーロッパ全土にもたらしました。

2月のおすすめ商品は、1870年~1880年代に製作された、ノルマンディー様式ダイニングフルセットです。

ヴァイキング達は、ノルマンディーの広大な大地を開拓しました。また、キリスト教に改宗することで、敬虔な信者に生まれ変わったのです。海で培った知識と技術で多くの教会・修道院・城を建設・再建し、ヨーロッパで最初に確立された建築様式、「ロマネスク建築」を発展させます。次第に国力を向上させ、1066年、遂に7代目ノルマンディー公ギョーム(ウィリアム征服王)がイギリスを征服。ノルマン人の政治的躍進が始まります。勢力拡大に伴って、ノルマンディーの文化、とりわけ建築・装飾美術様式は、イギリス、スペインなどの大国に多大な影響を与えます。その後、百年戦争終結で公国はフランスに併合されますが、1492年新大陸発見に始まった大航海時代は、造船・貿易が盛んなノルマンディー地方に莫大な富をもたらします。多くの新興ブルジョワが、王侯貴族並みの生活を楽しむようになります。高級家具の需要拡大は、ノルマンディーの家具製作・装飾技術をさらに向上させ、円熟させていきました。

贅の極みであるダイニングフルセット。全体に惜しげもなく使われている艶やかなヨーロピアン・ウォルナットは、非常に高価かつ入手が困難な木材で、宝石並みの価値と称されています。

セットの中心となるのは、見上げる高さのキャビネットです。その堂々たる風格に、かつて所有していた邸宅の途方もない規模を想像させられます。下部中央の扉には、東方風のスカーフを頭に巻いた船乗りと、四方を囲む海の神ポセイドンの使い・イルカの姿。所々に、ノルマンディーの歴史と文化が表現されています。精密に作られた蝶番が、一枚板の扉のずっしりとした重量を、楽々と支えています。技巧の華麗さと、それを支える工学的技術。ノルマンディーの家具作りの高度さを、ここにもうかがうことができます。

そして、大理石張りのサイドボード。連続的に彫刻された球体は、黄金のリンゴのように盛り上がり、所々にノルマンディー公国の象徴、ライオンが厳めしく「悪魔」を追い払っています。立体的意匠と繊細に加えられた手仕事。端正で緊張感のある品格が漂っています。

伸縮可能なダイニングテーブルと革細工の椅子。椅子背もたれには、イルカの躍動的な姿が革細工されています。背もたれ下部には、当時リヴァイヴァルされ、世界中で大流行したロマネスク様式のアーチが施されています。

このように、ダイニングセットが完璧に揃って見つかることは極めて珍しいこと。豪奢な家具ひとつひとつの、隅々までつくされた手仕事を眺めているだけで、当時のブルジョワジーの生活が偲ばれます。

ヨーロッパが築き上げた文化・技術・膨大な富が、人々にもたらしたもの。黄金期のヨーロッパにしか存在し得なかった美と贅の神髄を、時を越えてこの家具は静かに物語っています。

・テーブル 横幅130cm 奥行98cm 高さ71cm
・チェア 横幅44cm 奥行48cm 高さ130(48)cm
・キャビネット(小) 横幅116cm 奥行45cm 高さ186cm
・キャビネット(大) 横幅170cm 奥行60cm 高さ283cm

  • 8世紀から11世紀にかけて、北欧スカンジナヴィア地方に「ヴァイキング」と呼ばれる海の民がいました。「ロングシップ」という不思議な細長い船を操って、海を駆け陸を移動し、西ヨーロッパ沿海部に神出鬼没の進出を繰り返しました。その一部族は、やがてセーヌ川河口に集結地を作ります。後にノルマンディー地方を与えられた彼らは、ノルマン人と呼ばれます。

  • ダイニングフルセットのメイン、壁一面を覆い尽くすキャビネットです。正面扉は分厚い一枚板で、見事な彫刻が施されています。バルコニーの上から、今にも女性が手紙を落とそうと身を乗り出しています。少し不安げな表情。手紙を拾い上げ、読む青年。夢見るように見上げた瞳は陶然と輝き、唇はうっすらと開いています。

  • 扉に刻まれたのは、「ロミオとジュリエット」の有名なバルコニーのシーンです。この家具が製作された19世紀には、作品は広くに愛され、世界各地で上演されるようになっていました。敵対する家柄に属した男女が、一目で恋に落ち、やがて運命が悲劇的な結末にふたりを導く…物語の人気は衰えることなく、19世紀になると、物語を題材とした交響曲・オペラが発表されるようになりました。

  • ノルマンディー公国の紋章、2頭の獅子です。現在のイギリス王室は、ノルマンディー公ギョームがイギリスを征服し、イングランド王ウィリアム1世として即位してから始まります。

  • ノルマンディーのモンサン=ミシェル修道院付属教会の曲面天井には、「ロングシップ」の船底建造技術が使われています。ヴァイキングは、早くから東アジア・中東と交易していたため、独自の航海術・工業技術・軍事技術がありました。彼らは優れた船大工であり彫金職人でもあり、その技術は当時世界最高のレベルと称されていました。教会建築に携わる彼らの中からは、優れた建築士、木彫職人、家具職人が生まれ、ノルマンディーの文化は益々成長していきます。

  • キャビネットを支えているのは、北欧神話の妖精、ドワーフです。修道士の服を着た怪力の小人ドワーフは、魔力のある武器や宝を創ることができる森の匠です。木や岩の中に自由自在に姿を消すことができて、大食いの大酒飲み。ちなみに白雪姫と森で暮らした7人の小人は、このドワーフです。

  • イルカは、ギリシャ神話・海の神ポセイドンの使い。古くから船乗りたちに愛され、航海の季節を知らせてくれたという伝説が残っています。

  • 革は耐久性と保温性に優れたため、紀元前から主に武器や靴・馬具などに使われ移動・狩猟文化を支えて来ました。ヨーロッパで、革が家具装飾に使われるようになったのは、14世紀になってからです。発端は要人を運ぶための椅子籠や、椅子創りでした。