エドワディアン・・・
ヴィクトリア女王時代の荘厳・華美なデザイン様式から一転、軽やかで洗練されたデザインが求められるようになった1900年代初頭。まさにその時代を象徴するかのような気品を漂わせるこのエドワディアンショーケース。サイズも小振りで、エレガントさの中に可愛らしさも秘めています。
ショーケースの命ともいえる前面ガラス部のデザイン。一枚ガラスを大胆に用い、中に飾るコレクションが最高に映える様計算されています。
敢えて扉を両サイドに配し、余分な装飾を除いています。しかし、四隅には花弁を模った象嵌細工、ガラスの四隅もわざわざ円形に切り取られており、まるで、額に飾られた一枚の静物画を見るかのごとく、見る者に心地よい印象を与えます。
ガラスはもちろんアンティークファンにはたまらない波ガラスで、中のコレクションをよりいっそう深みある色合いに彩ります。背面はミラーバックで、コレクションをより際立たせるよう設計されています。
家具を印象付ける、トップの装飾。ガラスに合わせて緩やかに描くカーブと中央のレリーフが、シンメトリーに美しく、均整のとれたネオクラシカルのデザインがアンティークらしい荘厳な印象を与えてくれます。
このデザイン、何か動物に見えませんか?そう、コウモリです。
ヨーロッパでは、コウモリは幸福をもたらすとして珍重され、たびたび家具や陶磁器の意匠に用いられます。
下部収納部分は、扉から引き出しに至る滑らかなカーブが、家具に立体感を与えています。マホガニー特有の光沢感ある木目の中に、象嵌細工が浮き上がり、トップ装飾と同じコウモリ型にデザインされたブロンズのハンドルがさり気ないアクセントとなっています。
ショーケース本来の「価値あるものを美しく飾る」という目的を極限まで追求しながらも、中に飾るものをより引き立たせるような装飾デザインにまでこだわり抜いた、完成された逸品です。この100年、それぞれの時代に最高のコレクションを輝かせ、持つ者に誇りと感動を与えてきたのではないでしょうか。