サロン……ヨーロッパの上流社会で繰り広げられた夢の世界。教養ある館の貴婦人が、社交界から選び抜いた参加者を招いた集い。自らがパトロンとなり支援する音楽家に新曲を演奏させたり、高名な作家を招いて文学について語り合ったり、所有するシャトーの自慢のワインを披露する空間。美意識と教養を触発し合う、極めて貴族的な習慣と言えるでしょう。
その華麗なるサロンを象徴するサロンスイート。制作されたのは、装飾芸術が全盛を誇ったナポレオンⅢ世の時代です。「端正」という言葉が、これほど当てはまる家具は無いように思えます。かつての所有者は、この家具とどんな心豊かな時間を過ごしていたのでしょうか。