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夢織のおすすめ

ナポレオン3世 ルイ16世様式<br />
ダイニングフルセット<br />
1870年頃 フランス

ナポレオン3世 ルイ16世様式
ダイニングフルセット
1870年頃 フランス

1773年6月8日、パリ、チュイルリー宮殿。十代の初々しいルイ・オーギュスト王太子夫妻が、初めて首都パリを公式訪問しました。未来のフランス国王である王太子と、オーストリア皇室からお輿入れした王太子妃を一目見ようと、大群衆がひしめき合っていました。やがてテラスに現れた王太子夫妻を、人々はいっせいに祝福します。「王太子万歳!王太子妃万歳!」群衆の割れんばかりの大歓声に驚いて、その大きな瞳を見開きながら、頬をバラ色に高揚させる王太子妃。見る者の目を釘付けにしてしまう、愛らしい姿です。おとぎ話の世界から現れたような、可憐な17歳の王太子妃に、人々はすっかり魅了されてしまいました。伝説の人マリー・アントワネットが、歴史に登場した瞬間です。

今回の夢織のおすすめは、1870年代フランス製、ナポレオン3世 ルイ16世様式 象嵌ブロンズダイニングフルセット。
荒廃した革命後、フランスに豊かさが戻ってきたナポレオン3世の時代、或るフランス貴族の館のダイニングルームに置かれていたものです。特別注文で造らせたキャビネット2台とダイニングスゥイートが完璧に揃ったもので、その堂々たるたたずまいから、館の暮らしぶりが伺える贅沢な逸品です。

それでは細部を見ていきましょう。

  • ミラーバックディスプレーキャビネット

    黄金の登頂飾りまで218cmの高さ、幅は172.5cm。堂々たる姿です。貴族の館のダイニングルームにふさわしい風格で、細部にはルイ16世様式の特徴である、可憐で繊細な意匠が細やかに加えられています。 土台の棚部分。中央左右の開き戸に、咲いたばかりのバラと朝顔の花籠が対照的に象嵌されています。木目がダイヤモンド型に象嵌された背景は、注意深くウォルナットの色調が選ばれており、華麗なグラデーションで花々を際立たせます。花籠を吊るしたリボンは、ゆるやかなねじれさえ極めて写実的に表現され、しなる曲線が、みずみずしく香り高い花々の重みを感じさせます。両サイドの半円型の扉。球形の象嵌から放射線を描いている線は、咲き誇るバラに降り注ぐ光。初夏の日の正午の風景が、神話の一場面のように表現されています。トゥピ・サボと呼ばれる、華奢な足。可憐なフォルムが、家具全体に繊細さを加えています。 棚の上部、花綱をデザインした可憐なハンドルが美しい4つの引出。丁寧に揃った垂直の木目をバックに、愛らしいリボンが丁寧に象嵌されています。弓矢を入れる矢筒を模した古典的なデザインは、ギリシャ・ローマの古典的美意識の導入。ルイ16世の時代に新古典主義として流行したデザインです。

  • キャビネット上部、ミラーが張られた飾り棚部分。棚の中に並べられる自慢の調度品や、室内のシャンデリアの輝きが、背部に張り巡らされたミラーに映りこむ様子が想像できます。開き扉のアンティークガラスの重厚なきらめきが、家具に風格を加えています。

  • ミラートップキャビネット

    ミラー登頂飾りの黄金細工(オルモル)。オーバル型のフォルムを包み込む、優雅なリボンとツリガネソウ。家具全体を格調高く演出します。ミラーを囲む溝型の枠に加えられた、クロス型の細工。古代ギリシャ・ローマ時代の神殿や宮殿といった建造物の柱の基盤部分、トーラスに見られる装飾です。家具の所々に飾られる金色の意匠。可憐なリボン、太陽の光状を模したロゼット、しなやかなツリガネソウに囲まれたメダル…そのすべてが、直線と左右対称を美の黄金比率とした古典的な美意識に、柔軟さと華麗さを加えています。

  • ダイニングスゥイート

    天板の木目が美しいテーブルを、可憐な4客の椅子が取り囲みます。 木目の、褐色と金色のコントラストと、流れるような曲線が眩惑的な天板。深い森の中の、湖面の波紋を彷彿とさせます。4本の矢筒型の足にはフルーディング(溝型彫刻)がなされ、高貴なロゼットが飾られています。4本の足を頑強に繋げる貫は、優雅なH型を描き、その中央には王冠のように格調高いロゼットが飾られています。

  • 可憐な椅子の、直線的な足。真っ直ぐな背もたれ。張り替えた生地は、弊社社長萬田あけみが選んだイギリス王室御用達のシルクです。エキゾチックなダマスク文様が、アントワネットの王朝趣味を、さらに色濃くさせます。フランス美的様式の究極の形ロココから、無駄な装飾線をそぎ落とした洗練されたデザイン、アクセントとして加えられる可憐で精密なモチーフ。ルイ16世様式を盛り立てたのは、家具好きで知られていたマリー・アントワネットの影響と言われています。様式の美の法則は、気品と可憐さを同時に表現させます。

  • 象嵌細工の歴史
    ヨーロッパ高級装飾品の代名詞とも言われる象嵌細工は、17世紀の大航海時代を経て発展します。特にインド、アフリカ、アジアから渡って来る木材は、ルネサンス期のフィレンツェの職人達の制作欲を大いに刺激しました。技術はネーデルランド、フランドール、フランスに広がり、ルイ14世の時代には、螺鈿や鼈甲、水晶が取り上げられ、芸術的な領域に高められます。

  • ルイ16世様式
    獣脚、左右非対称のロカイユ等、15世の豪奢なS字曲線が時代遅れになった背景には、ルイ16世期の1748年、古代ローマ都市ポンペイの発掘があります。この歴史的発見に影響を受け、古典的で、直線的・左右対称的な美意識が追求されます。「ルイ16世様式」は、「新古典主義」とも呼ばれました。

  • ルイ16世様式のモチーフ
    花々や葉、果実を編んで綱にした文様、別名花綱と呼ばれるフェストストーンは、古代ローマ時代からヨーロッパの高級家具によく見られます。リボン文様や花籠、楽器と併せて、ルイ16世様式の装飾に欠かせない要素です。本作品には、細部に渡ってふんだんにこれらのモチーフが使用されています。

  • ルイ16世様式のモチーフ―ロゼット、オーバル
    古代ギリシャ、ペルシャで太陽の印として、装飾モチーフに使われたロゼット。放射線状に花弁が広がる円形装飾で、バラ花型とも訳されます。また、教会の円形ステンドグラス、バラ窓の起源とされています。登頂飾りに使われているオーバル型は、ルイ16世様式で多用されたもので、円形や楕円形と共に好んで取り入れられました。

  • ルイ16世様式のモチーフ―トゥピ・サボ
    サイドボードの足元に使われている、フランスの独楽の形状のトゥピ・サボtoupie sabots。ルイ16世様式の高級家具にしばしば見られるモチーフです。直線的な脚先をより華奢に見せるように演出したり、重厚な家具のイメージに繊細さを加える個性的なモチーフです。

  • アントワネットの生活―お抱え家具作家
    家具好きのアントワネットは、伝説となった「ヴェルサイユ宮殿ルイ15世の執務室の机」を制作したジャン=アンリ・リーズネルをお抱えの家具作家にします。リーズネルは王妃のために黒檀、ローズウッドやマホガニーなどを贅沢に使い、洗練された家具を製作します。こうした家具は、貴族の間で大流行しました。

  • アントワネットの生活―音楽
    アントワネットがオーストリア皇女時代、6歳のモーツアルトに求婚されたエピソードは有名ですが、音楽好きであったことはあまり知られていません。幼い頃からハープを愛し、オペラに革命をもたらしたウイーンの宮廷楽長グルックに音楽を学び、自ら歌曲を作曲するほどでした。

  • アントワネットの生活―ファッション
    パンドラという、18世紀に流行したミニチュアの人形をご存知でしょうか。フランスの最新流行のドレスを縮小して作らせ、着せた小さな人形です。アントワネットは、「ファッション大臣」と命名したお抱えのデザイナー、ローズ・ベルタンに、自分の新しいドレスを着せたパンドラを作らせ、母マリア・テレジアや姉妹達に贈りました。時代のファッションリーダー、アントワネットのドレスは、こうしてヨーロッパ各国宮廷に広まったのです。

  • 花咲ける初夏の森へ。花籠いっぱいに摘んだ、朝露に濡れたバラの花。散歩から帰って迎えてくれるのは、鮮やかな色のスミレのキャンディ、冷やりとしたミントのシロップ。楽しいおしゃべりや午睡、夜の演奏会のために選んだ扇… 亡き王妃が残した夢の残り香が漂う、華麗なダイニングセット。悲劇と呼ぶには、あまりにも美しい歴史が、この家具に刻まれています。