壁にかけられた額絵、室内を彩る天井画、美しい絵付けによる装飾家具・・・ヨーロッパの城やマナーハウス(貴族の館)の室内装飾を彷彿させる、美しい貴婦人が描かれた気品高いテーブルです。

シルクのような美しい色合いの高級木材サテンウッドに、熟練の絵付師が、貴婦人の肖像画と薔薇を中心に優美に描いています。額縁のように彼女を縁取るのは可憐なリボンと薔薇。軽妙な筆致で、幕板に至るまで細かな花弁が散りばめられています。ヴィクトリアン後期より、上流階級の間でこのような絵付家具が流行しました。なかでもバラや花籠をモチーフにした繊細な絵柄のものは、アンジェリカ・カウフマン・スタイルと呼ばれ、人々に好まれました。アンジェリカ・カウフマンは、18世紀に活躍した新古典主義の女流画家です。肖像画・歴史画の名手で、女性らしい甘やかな表現とロマンティックな雰囲気を持つ画風は、シェラトンのデザインやヴィエナの絵付けにも影響を与えるほどでした。とりわけ、彼女の絵に魅了されたのが王侯貴族です。英国の王族も、彼女と交流があり、その絵を求めたと言われています。

バラの咲き誇る庭のかたわらで、貴婦人がゆったりと腰かけ、優しく贅沢な時間が過ぎていく・・・眺めていると、そんな情景を連想させられます。王族に愛されたアンジェリカ・カウフマンの意匠を汲むこのテーブルを傍に置いて、優雅なひとときをお過ごしになりませんか。