1875年1月5日。14年の月日をかけて改装したパリ・オペラ座(通称ガルニエ宮)の落成式が、華やかに開催されました。オペラ座改装はナポレオンⅢ世のパリ改造計画の目玉プロジェクトとして実行され、新しい時代の象徴になるべく、絢爛豪華な空間がつくられました。
そのオペラ座の輝かしい落成式があった、装飾芸術の黄金期と言われる19世紀末・・・本品は、贅沢と幸福の絶頂にあったフランスの上流階級の暮らしを見守った、華麗なる逸品です。室内装飾の頂点を極めたと言われるロココ。そのロココのルイ15世様式を体現した荘厳な佇まいは見る者を魅了します。トップから脚先まで、貴族趣味のロカイユ、アカンサスの葉を繊細な彫刻で見事に表現しています。その美しい木彫刻の表面には、豪華さを演出するため金を使用して贅沢に仕上げられています。
オペラ座の室内装飾のような豪華絢爛な一室に、存在感を放ち設えていた情景が想起される魅力的なキャビネット・・・フランスの繁栄と装飾芸術の黄金期を象徴する家具と言えるでしょう。
ロココのルイ15世様式を体現した荘厳な佇まいは見る者を魅了します。トップから脚先まで、貴族趣味のロカイユ、アカンサスの葉を繊細な彫刻で見事に表現しています。特にトップのロカイユ彫刻の仕上がりは圧巻です。その美しい木彫刻の一部の表面には、豪華さを演出するため金を使用して贅沢に仕上げられています。
ロココ芸術の偉大なるパトロンであったポンパドゥール公爵夫人は、画家フランソワ・ブーシェの才能を大いに評価し、肖像画を描かせるばかりでなく、ドレスやアクセサリーのデザインを任せ、王立セーブル窯やポーヴェーのゴブラン織工場のデザイン担当理事に任命し、フランス宮廷をロココ一色に塗り替えました。ポンパドール侯爵夫人を象徴するデザインであるロココは、フランスではルイ15世様式とも呼ばれます。本品(ディスプレーキャビネット)は、ルイ15世様式による優雅な秀逸な装飾家具です。 ※【画像】ポンパドゥール夫人(フランソワ・ブーシェ 1758年)
ルイ15世の時代、ロココ芸術は頂点を極めた。王自身、歴代君主の中で最も装飾に興味を持ち、ヴェルサイユ宮殿の改築には、自ら指示を与えました。セーヴル窯に出資し、王者のクリスタル・バカラ設立を認可するなど、装飾芸術を大いに支える存在でありました。
本品は、究極の美と評されるロココ様式を体現したディスプレーキャビネットです。
※【画像】ルイ 15 世のために制作されたロールトップデスク(ジャン=フランソワ・オエバンとジャン=アンリ・リーズナーによって1769 年に完成)
フランス大統領パトリス・ド・マクマオン伯爵、わずか18歳の初々しいスペイン王アルフォンソ12世、ロンドン市長夫妻、パリ伯、オルレアン家のプリンセス、前ハノーファー王など、名だたる王侯貴族や名士がオペラ座の落成式に招待され、会場は溢れんばかりの着飾った紳士淑女で埋め尽くされました。
改装デザインを手がけたシャルル・ガルニエによる、きらびやかに「水晶の光を放つ」、7トンのブロンズとクリスタルガラスの巨大なシャンデリア、舞台のカーテンや客席は全て深みのある真紅で統一され、人々はパリにこつ然と現れた夢の殿堂の中で、幸福感に酔いしれながら幕が開く瞬間を待っていました。
贅沢と幸福の絶頂にあったフランスの上流階級の暮らしを見守った、華麗なる逸品・・・オペラ座の室内装飾のような豪華絢爛な一室に、存在感を放ち設えていた情景が想起されます。
フランスの繁栄と装飾芸術の黄金期を象徴する家具と言えるでしょう。