SOLD OUT |
華麗なる装飾と優美なる存在感で今なお、見る者の心を時めかす、アール・ヌーヴォーの装飾芸術・・・
英国のアール・ヌーヴォーは植物をモチーフとしながらも、フランスの流動曲線のアール・ヌーヴォーと異なり、潔いまでの簡潔さでギリギリまで装飾を抑え、極端なまでに縦のラインを強調したものでした。
今回ご紹介するのは、大陸のアール・ヌーヴォーとは一線を画したデザイン美を誇る、美しい縦のラインと有機的な曲線美の融合、そしてジャポニズムからのインスピレーションの結実をみる、英国式アール・ヌーヴォーのセティです。
まず目を引くのは緩やかな曲線のバックフレームと直線的スプラット(背当て)のフォルム。シンプルでありながら一度見たら忘れられないインパクトを見る者にあたえます。上質のマホガニーの深いしっとりとした艶やかな木肌と、シックなモスグリーンの上品な光沢のシルクサテンの織の座の見事な調和がこの上なく美しく、一見シンプルで男性的にも見えるこのセティに、洗練された貴婦人のような輝きを与えています。
トップレイル(背もたれ上部)とスプラットにあしらわれた、りんどうのような小花の彫刻。華美になり過ぎず、さり気ない装飾に英国アール・ヌーヴォーのこだわりを見ることができます。
大陸のアール・ヌーヴォーは有機的な曲線が自由に躍動し、相対的デザインといった一定の制約から逃れ、いかなる規範からも逸脱していくのに対し、英国のアール・ヌーヴォーは余計なものを削ぎ落としながら本質的な形を求めた構造を基に、有機的な装飾を施します。
英国アール・ヌーヴォーの本質は私達日本人には馴染み深い、わび・さびの心にも通ずる美意識が存在します。
その英国アール・ヌーヴォーのセティが作り出す空間美・・・。それは時代を超えて、また遠い英国と日本を結ぶ架け橋のように、私達日本人の感性に深く訴えかけ、どこか懐かしく、また心地よい空間を演出してくれることでしょう。
アール・ヌーヴォーのルーツは英国
アール・ヌーヴォーの源流は19世紀後半にイギリスで興ったアーツ&クラフツ運動(※2009年6月のおすすめ商品参照)とされています。 ウィリアム・モリスが手がけた植物柄の壁紙など職人的な物作りの復権で、美しく装飾された様々な日用品が人々の共感を得ました。やがて芸術と生活を結びつけるという意識はヨーロッパ各地に広がっていき、その動きにいち早く反応したのはベルギーです。ヴィクトール・オルタやポール・アンカールといった若い建築家達の斬新な装飾で埋め尽くした空間が出現しました。アール・ヌーヴォーという呼び名の発祥地フランスでは、ベルギーを訪れ、オルタらの建築に触発されたエクトール・ギマールが、独自のスタイルを展開し、やがてメトロの駅の設計に携わります。もともとバロックやロココの装飾文化が根づいていたフランスでは、他にも多くの建築家やデザイナーが個性的な作品を残しています。
英国アール・ヌーヴォーの第一人者、チャールズ・レニー・マッキントッシュ
アーツ&クラフツ運動の発祥地、英国のアール・ヌーヴォーの第一人者は、グラスゴーを拠点とした、チャールズ・レニー・マッキントッシュ。当時、ヨーロッパ屈指の大都市だったグラスゴーは重工業と交易で栄え、若い芸術家達にとっても、刺激的な環境でした。海外からは日本を含めて様々な文化が伝わってきました。そうした中でグラスゴー美術学校を卒業したマッキントッシュは日本への関心も高く、独自のスタイルを作り上げました。彼の作品にも見られるように、英国のアール・ヌーヴォーの特徴はわずかな曲線と極端なまでに強調された縦のラインにあります。写真は現存するグラスゴー美術学校。彼の代表的傑作と言われ、建築家としての彼の作品は外観から内装、そして家具までを総合デザインしています。