1850年代
フランス
マホガニー
W51cm D35cm H114cmマホガニーの木目の美しさと縁に配された金色が目を惹く楽譜入れ。18世紀終わりに最初にオーダーしたとされるカンタベリー大司教にちなんで、イギリスではカンタベリーという名で、特に19世紀に上流階級の間で流行しました。今回ご紹介するのはモナコのお城から見つかった特注品です。
初期においてはオープントップのラック型が主流でしたが、イギリスではヴィクトリア時代に装飾性の高い天板付きのものも作られるようになりました。本品はその同時代にフランスで製作されたもので、過度な装飾を排除した端正な佇まいがルイフィリップ様式の特徴を示しています。黄金色の真鍮が格調高さを演出するために象嵌されており、光沢のある深いマホガニーの色味と調和し、家具に高級感を与えています。持ち運びができるように比較的華奢な造りのものが多いカンタベリーは、現存するものが少なく、本品も全体を支える脚は非常に繊細ですが良好なコンディションを保っており、良質の木材が使われていることが窺えます。
稀少なカンタベリーの中でもモナコのお城から出た最高級の逸品。貴婦人が優雅にピアノを演奏する傍らで用いられていたのでしょうか?当時のように、楽譜入れとしてはもちろん、飾り棚としてお気に入りのコレクションを飾れば、格調高い空間を演出してくれることでしょう。