ヨーロッパ絶対王政の時代、金蒔絵を施した日本製の漆器は各国王族の垂涎の的でした。とりわけオーストリアに君臨した女帝マリア・テレジアは、その価値をダイヤモンドの比ではないと絶賛し、富と権力にまかせて膨大なコレクションを蒐集しました。1780年マリア・テレジアが崩御した後、50点に上る漆器の小箱が娘のフランス王妃マリー・アントワネットに譲られます。アントワネットはすぐさま母親の思い出が籠った品を飾る為のショーケースを、お気に入りの王室お抱え家具作家ジャン=アンリ・リーズナーに作らせました。
その華麗なるマリーアントワネット時代を彷彿させる、豪華な金箔が貼られたミラーバックショーケース。蒔絵を愛し、ゴールドという色を愛し、ヴェルサイユに自らの内殿として「黄金の間」を設けたアントワネット。この作品は、まさに「アントワネット好み」の、夢のように美しい装飾家具です。眺めているだけで陶然と幸福に浸れます。