フランスの至宝、ヴェルサイユ宮殿……。ブルボン王朝の栄華の象徴たる、宮殿の室内装飾は、王位が継承されるたびにその趣を変えてきました。1775年、王妃マリー・アントワネットは、国王専属の建築家であるリシャール・ミクに、宮廷内に円形周柱神殿「愛の神殿」と、スフィンクスが取り囲む8角形の音楽サロン「ベルヴェデール亭」の建築を命じます。
ルイ15世による、曲線と貝に彩られる華麗なロココ様式の宮殿は、新しい王ルイ16世が「古代回帰」と名付けた、直線と左右対称の古代ギリシャ・ローマ的美意識に傾倒した、新古典様式に塗り替えられていきました。
本品は、そのルイ16世様式を体現した、フランスはナポレオン3世時代に製作されたサロン3点セットです。ナポレオン3世の妃、ユージェニーが熱烈なマリー・アントワネットのファンであったことから、アントワネット趣味がフランスの社交界で大流行していた頃の華やかな逸品。実際アントワネットがサン=クルー城(写真.2参照)の化粧室で使っていた王妃の紋章入りの椅子や、春の行幸用に注文した椅子とデザインが酷似しており、かつての所有者がこだわって注文した「アントワネット好み」の調度品であることが伺えます。木材には高級感を演出するためローズウッドが使用され、ルイ16世様式の気品高さに格調高さが加わり荘厳な佇まいです。貴族のサロンを彷彿させる、見る者を魅了する華麗なる室内装飾品です。