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ガレ「木蓮」象嵌4段ネストテーブル<br />
1900年代 フランス ウォルナット

ガレ「木蓮」象嵌4段ネストテーブル
1900年代 フランス ウォルナット

花は雄弁です。それは花の構造やいのちの神秘、あるいは芸術家の筆による象徴性によるのですが、ときとして人間の表情よりも豊かな暗示力があるのです。―エミール・ガレ

 

19世紀、フランス東部ロレーヌ地方のナンシー。美しい森に恵まれたこの街に、本と植物を愛する多感な少年がいました。ビクトル・ユーゴーの詩を諳んじ、虫眼鏡片手に植物や昆虫を追いかけた少年の奔放な観察眼と深い洞察力は、やがて芸術の在り方さえ変革してしまう才能に成長し、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家としてヨーロッパの美術史にその名を刻みます。

エミール・ガレによる代表的な家具作品の1つである「木蓮の花」をテーマにした4段ネストテーブル。木蓮の花を中心に、自然界の美しい花草や蝶を、4つのテーブルの天板に芸術性高い象嵌細工により表現しています。一つ、一つのテーブルとしても完成度の高い本品は、4つのテーブルを全て広げると、連続した構図が全て繋がり、作品は完成されます。

ガレは従来のガラスに加えて家具作品を手掛けるようになったのは1885年頃になります。ガレにとって全く未知の領域である家具創りは、模索の連続でした。当初はルネッサンスやロココの様式を応用しつつも、やがて「実用性があり、生活に取り入れる美」である独自の家具創りにたどり着きます。このネストテーブルが作られた1900年頃は、ガレ工房のテクニックとデザイン性が最も円熟した時期に当たります。

自然界の美を、お部屋の中に・・・アール・ヌーヴォーの思想と芸術家エミール・ガレの晩年に行き着いた芸術観が、この連続柄によるネストテーブルに込められています。

  • 1.象嵌細工の天板(1枚目)

    1.象嵌細工の天板(1枚目)

    春の到来を告げる、マグノリアの花。左右に枝を広げ、咲き始める清らかな花弁。流れるように連なる花々の姿。その大胆で印象深い構図に、浮世絵の影響が見られます。遠近法に囚われず、対象を斬新な距離感で捉えるテクニックは、当時ヨーロッパで大流行した浮世絵で使われる視覚効果です。生き生きと捉えられた花の姿に、春のみずみずしい息吹が宿ります。

  • 2.象嵌細工の天板(2枚目)

    2.象嵌細工の天板(2枚目)

    ガレの家具の特徴として、象嵌細工の素晴らしさが上げられます。ガレ工房には600種を越える象嵌用の木材が揃えられていたため、幅広い色彩を表現できました。花弁にはイングリッシュ・カーリーシカモアが使われています。清廉な白い木肌に浮き上がる、黄金色の木目が花弁の美しさを際立たせています。固い蕾はオーク。赤味がかったガク部分には、マホガニー。そして枝部分の写実的な表現。ローズウッドの木目の濃淡が、細かく歪曲する枝の節々を巧みに表現しています。

  • 3.象嵌細工の天板(3枚目)

    3.象嵌細工の天板(3枚目)

    黄金色の大地に、静かに訪れる夕闇。2羽の紋白蝶が、互いに引き寄せられるように巡り合います。生命の、永遠の一瞬…やがて産まれて来る生命を予感させる、神秘的な早春の風景です。4枚の天板には、それぞれガレのサインが象嵌で施されています。蔓草の様な流麗なサインは、見事に構図に溶け込んでいます。

  • 象嵌細工の天板(4枚目)

    象嵌細工の天板(4枚目)

    ガレは、ナンシーの森に咲く野生の花々を好んで作品に取り入れました。可憐な桜草や、朝露を滴らせるスノードロップの蕾。まだ少し頬に冷たい春風が運んでくる、草木のみずみずしい香り。ここでは、空中から見降ろされるような目線で、花々が生き生きと描かれています。楽しげに飛び交う蝶の眼が見た、早春の光景でしょうか。

  • 5.躍動感ある植物の装飾

    5.躍動感ある植物の装飾

    特筆すべきは、脚の部分です。材質はウォルナット。植物の茎に喩えられた脚が、うねる様に広がる樹木の枝によって天板に繋がっています。左右に広がるダイナミックな枝の曲線、うねり、絡み合うその姿。森の深淵、生命の神秘を象徴的に物語っています。

  • 6.欄間と家具製作

    6.欄間と家具製作

    本品の天板と脚の継ぎ目部分。ここには欄間製作の技巧が活かされています。1867年頃から、ガレは浮世絵や日本の工芸品を積極的に収集し、作品に活かしています。欄間は、建築構造的には通気と採光機能を果たしますが、格調高い室内装飾でもあります。特に花鳥風月を立体彫りにした彫刻欄間は、その芸術性の高さから、優れた装飾芸術としてヨーロッパに評価されました。

  • 7.装飾とは生きた範型の手仕事

    7.装飾とは生きた範型の手仕事

    ガレは、家具の構造デザインに、植物の形態を応用しました。テーブルの脚や貫(脚の間を繋ぐ横木)に植物の茎を、天板と脚の連結部分に茎と枝の接合構造を応用するなど、独自の発想を活かします。家具製作で培った寄木細工のテクニックは、ガラス製作に応用されます。色ガラスの薄片をモチーフ型に切断し、加熱して接着させるマルケットリー(ガラス象嵌)です。ガレの因習に囚われない発想が、数々の作品を生みました。

  • 8.ガレのこだわり‐象嵌細工

    8.ガレのこだわり‐象嵌細工

    ガレ工房の家具を語る上で、象嵌細工の素晴らしさは欠くことのできない要素です。天板に咲き誇る花々。平面の木材で立体的を表現するには、木材の材質の特徴が大いに活かされます。花びら部分を見てみましょう。使用されているのは、イングリッシュカーリーシカモア。白金色に輝く美しい木肌が特徴です。所々、「杢」という帯状の煌めくうねりが、木目に直角に走っています。膨らみ始めた花の柔らかな質感は、縦・横の木目の視覚効果がもたらすのです。

  • 9.4つの連続柄によるガレ作品

    9.4つの連続柄によるガレ作品

    ガレによって表現された、4枚の早春の風景。南風が吹き、新たな生命の予感が大地にみなぎります。暖かな日差し、小鳥のさえずり、掌ですくう清廉な小川の雪解け水…冬に眠っていた感覚が、よみがえって来ます。ガレの、敬虔な祈りのような視線が、また巡り来た季節を祝福しています。